はじめに:販売ページは「1.7mA」、実際は「1.7A」
こんにちは。ニンジンです🥕
12VのDCソレノイドを買いました。販売ページの仕様欄には「1.7mA」と書かれています。
ところが、本体のラベルを見ると「Current: 1.7A」。1000倍違います。
コイルの抵抗をテスターで測って計算すると、流れるのは約1.73A。販売ページの「mA」は誤記でした。約1.73Aを12Vで流すと、消費電力は約21Wになります。小さな部品ですが、電気をかなり食う部品です。
この記事では、このソレノイドを使って
- DCソレノイドの仕組みとラベルの読み方
- コイル抵抗から電流を計算し、テスターで確かめる方法
- 極性はあるのか
- 通電するとコイルは何度上がるのか、ED%(使用率)を守るべき理由
- 突入電流は大きいのか、オフにした瞬間の逆起電力(逆起電流)とは何か
を、実測データと図解で紹介します。
マイコン(Raspberry Pi Pico 2 W)とMOSFETで動かす方法は、次の記事で解説しています。
DCソレノイドとは?仕組みとプル型・プッシュ型
仕組み:コイルが鉄の棒(プランジャー)を引き込む
DCソレノイドは、電気を流すと鉄の棒(プランジャー)を引き込む部品です。
回るモーターと違い、電気のオン・オフだけで「引く・押す」の直線の動きを作れます。電子錠や、自動販売機の硬貨の振り分け、ボタンを物理的に押す装置などに使われています。
HS-0530Bは「引く」と「押す」の両方に使える
今回使ったHS-0530Bは、プランジャーが本体を貫通しているタイプです。
| 状態 | バネ側(右) | 反対側(左) |
|---|---|---|
| オフ | プランジャーが出ている | 引っ込んでいる |
| 通電中 | 引き込まれる | プランジャーが押し出される |
右側を使えば「引く」(プル型)、左側を使えば「押す」(プッシュ型)動きになります。
今回使ったソレノイドはこちらです。

※リンクはアフィリエイトを含みます。価格・在庫・仕様の表記は変わることがあるので、購入前に各商品ページをご確認ください。
DCソレノイドの仕様(ラベル)の読み方:定格電流・保持力・ストローク・ED%
| 表記 | 意味 |
|---|---|
| Voltage: 12VDC | 定格電圧。直流12Vで使う |
| Current: 1.7A | 定格電流。12Vをかけたときに流れる電流 |
| Initial Force: 0.5N | 動き始めの力(プランジャーが出ている位置での吸引力) |
| Holding Force: 5N | 引き込んだあとの保持力 |
| Stroke: 10mm | プランジャーが動く距離 |
| ED%: 5% | 使用率。通電してよい時間の割合(後述) |
Initial ForceとHolding Forceは10倍違います。ソレノイドは、プランジャーが奥に入るほど力が強くなる部品です。
- 引き込み始め(プランジャーが出ている位置)は0.5Nしかない
- 引き込み終わると5Nになる
- そのため、重いものを最初から押し出す用途には向かない
DCソレノイドの電流はいくつ?コイル抵抗から計算してテスターで実測
コイル抵抗6.95Ωから電流と消費電力を計算する
まず、ソレノイドを何にもつながずに、2本のリード線の間の抵抗をテスターで測ります。
結果は 6.95Ω(コイル表面温度 26.4℃)。ここから計算すると、
- 電流:12V ÷ 6.95Ω ≒ 1.73A
- 消費電力:12V × 1.73A ≒ 約21W
ラベルの「1.7A」とよく合います。
コイルの銅線は、温まると抵抗が大きくなります(後述)。抵抗値を記録するときは、測ったときの温度も一緒にメモしておくと、あとで比べられます。
12Vに直結して電圧を測る
次に、ACアダプター(12V/2.5A)とソレノイドを直接つないで測りました。ED 5%を守るため、通電は2秒だけです。
| 測り方 | 結果 |
|---|---|
| ソレノイド両端の電圧 | 11.39V → 11.39V ÷ 6.95Ω ≒ 1.64A |
| テスターを直列に入れて電流を測る | 1.47A |
※電圧の写真は、後述の「極性」の確認で逆向きにつないだときの測定なので、マイナス表示になっています。大きさ(11.39V)はそのまま使えます。
電圧から計算した1.64Aは、計算値1.73Aの約95%です。残りの5%は、電流を流したことで、ACアダプターと配線(DCジャック・ワニ口クリップ)で電圧が下がった分です(無負荷では約12.2V)。
テスターを直列に入れると、電流そのものが減る
直列に入れて測った1.47Aは、電圧から計算した1.64Aより約1割少なくなりました。電圧と電流から計算すると、テスターを入れたことで約0.8Ω(推定)の抵抗が加わっています。6.95Ωのコイルに対して、無視できない大きさです。
数Ωの部品に1A以上流す回路では、電流計で直接測るより、電圧を測って抵抗で割る方法も知っておくと安心です。
DCソレノイドに極性はある?
逆向きにつないでも同じ向きに動く
リード線を、いつもと逆向きに12Vへつないでみました。
▲ リード線を逆向きにつないで通電したところ(音が出ます)
例外:還流ダイオード付きの回路と自己保持型(永久磁石入り)
ただし、次の場合は極性に注意が必要です。
- 還流ダイオードを付けた回路:ダイオードは、ソレノイドと並列に、電源に対して逆向き(帯を+側)に付けます(ダイオードの向きは次の記事で解説)
- ソレノイドの2本の線を入れ替えるだけなら問題ない
- MOSFETで駆動する回路で電源の+と−を逆につなぐと、MOSFET内部のダイオードと還流ダイオードを通ってショートする。電源ラインの電解コンデンサーも、逆向きの電圧で壊れる
- ダイオードをソレノイドの端子に直接はんだ付けした場合は、そのソレノイドには極性ができる
- 永久磁石を内蔵したタイプ(自己保持型・キープソレノイドなど):磁石と電磁石の向きの関係で動くので、極性があります
ED%(使用率)と焼損:5秒の通電でコイルは約18℃上がる
通電した時間の19倍は休ませる
ラベルの「ED%: 5%」は、1サイクルのうち通電してよい時間の割合です。
ED 5%の場合、通電した時間の19倍は休ませる必要があります(5%通電 + 95%休止)。
ED%は本来、「決まったサイクル時間の中で何%通電してよいか」を表すもので、メーカー品はサイクル時間や最大ON時間も決めています。このソレノイドのラベルにはサイクル時間の記載がないので、ここでは比率として扱います。
| 通電時間 | 必要な休止時間 |
|---|---|
| 0.1秒 | 1.9秒 |
| 2秒 | 38秒 |
| 5秒 | 95秒 |
この記事の測定でも、2秒通電したら40秒以上休ませています。
コイル抵抗の変化から巻線の温度を計算する
12Vで約21Wを消費するソレノイドは、通電している間ずっと発熱しています。どれくらい温まるのかを、コイルの抵抗の変化から調べました。
- 通電前に抵抗と表面温度を測る
- 12Vを5秒つなぐ
- 外してすぐに、もう一度抵抗と表面温度を測る
| 抵抗 | 表面温度(非接触温度計) | |
|---|---|---|
| 通電前 | 6.95Ω | 25.7℃ |
| 5秒通電後 | 7.45Ω | 25.7℃ |
※通電前の抵抗6.95Ωは、最後の通電から2時間おいて室温に戻した状態で測った値(そのときの表面温度は26.4℃)。表面温度の欄は、5秒通電の直前と直後に測った値です
5秒の通電で、コイルの巻線は少なくとも約18℃上がり、40℃台半ば(約45℃)になっていた計算です(外してから測るまでの間に少し冷めるため「少なくとも」)。
表面温度は変わらなかった(触って熱くなくても中は温まる)
一方、表面温度は25.7℃のままでした。測ったのは、コイルに巻かれた青いテープの上です。
- 熱がまだ表面まで届いていない:5秒では、中の巻線の熱が外側のテープまで伝わりきらない(テープ自体も熱を伝えにくい)
なお、むき出しの金属を非接触温度計で測ると、実際より低く表示されるので注意してください。
連続で通電すると温度は上がり続け、コイルの絶縁が傷んだり焼損したりするおそれがあります。だからED 5%を守ります。
長く引き込んだままにしたい場合は、引き込んだあとに電流を下げる(PWMで保持する)方法があります。これは今後の記事で試します。
DCソレノイドの突入電流は大きい?ACソレノイドとの違い
ソレノイドについて調べると「突入電流に注意」という話がよく出てきます。ただ、これは主にACソレノイドの話です。
- ACソレノイド:電流を決めるのはインダクタンス(コイルが交流を流れにくくする性質)。プランジャーが出ているうちはこれが小さく、大きな電流が流れる(突入電流)
- DCソレノイド:電流を決めるのはコイルの抵抗。電流はゆっくり立ち上がり、12V ÷ 6.95Ω ≒ 1.73Aより大きくならない。途中でプランジャーが動いた瞬間に、電流が一度くぼむことが知られている(今後の記事で確かめます)
DCソレノイドで注意すべきなのは、突入電流よりも次の3つです。
- 流れ続ける電流そのもの(今回は約1.7A。電源とスイッチ部品はこれに耐える必要がある)
- 連続で通電したときの発熱(ED%を守る)
- オフにした瞬間の逆起電力(還流ダイオードで逃がす。次の章で解説)
電流の立ち上がりの波形は、今後の記事でオシロスコープを使って確かめる予定です。
オフにした瞬間の逆起電力(逆起電流)と還流ダイオード
コイルには、流れている電流を変えまいとする性質(インダクタンス)があります。スイッチを切って電流を急に止めると、電源電圧よりはるかに高い電圧を出します。これが逆起電力です(「逆起電流」と呼ばれることもあります)。
- ダイオードなし:高い電圧がスイッチ部品(MOSFETやトランジスタ)の耐圧を超えて、壊れることがある
- ダイオードあり:帯(カソード)を+側に向けてソレノイドと並列に入れると、高い電圧が出ない
デメリットは、電流がゆっくり減るぶん、プランジャーが戻るのが少し遅くなることです。速く戻したいときは、ダイオードにツェナーダイオードを直列に入れる方法があります。
マイコンとMOSFETで動かすときの回路は次の記事で、オフにした瞬間の電圧の波形は今後の記事で確かめます。
DCソレノイドのメーカー(新電元・タカハ機工)と格安品の違い
国内でソレノイドを作っている主なメーカーには、次のような会社があります。
- 新電元メカトロニクス:ソレノイドが専門のメーカー。直流ソレノイドとして、プッシュ・プル型、ロータリー型、自己保持型などをそろえていて、技術資料には作動周期や最大ON時間まで載っている
- タカハ機工(福岡県):ソレノイド専業のメーカー。約270種類を製品化していて、通販(MonotaROなど)でも買える
一方、「CKD ソレノイド」「CKD DCソレノイド」で検索すると出てくるのは、主に空気や液体の流れを切り替えるソレノイドバルブ(電磁弁)です。「DC24V」のような「DC」は、弁を動かすコイルの電源の種類を表しています。今回のような「押す・引く」ソレノイドとは別の製品です。
メーカー品と格安品の大きな違いは、仕様の情報量と正確さです。
- メーカー品:定格電圧・電流のほか、作動周期や最大ON時間(ED%にあたる情報)、ストロークごとの吸引力のグラフ、温度上昇などが資料に載っている
- 格安品:ラベルの数値程度。販売ページの記載が間違っていることもある(今回の「1.7mA」)
格安品を使うときは、ラベルを確認し、コイル抵抗をテスターで測って電流を計算しておくと安心です。
まとめ
- DCソレノイドは、コイルが電磁石になって鉄のプランジャーを引き込む部品
- HS-0530Bのコイル抵抗は6.95Ω(26.4℃)。12Vで約1.73A・約21W。ラベルの1.7Aと一致し、販売ページの「1.7mA」は誤記
- 12Vに直結すると、ソレノイドにかかる電圧は11.39V(約1.64A)。テスターを直列に入れると電流は1.47Aに減る
- 極性はない。逆向きでも同じ向きに動く(還流ダイオード付きの回路と、永久磁石入りのタイプは例外)
- 5秒の通電でコイルは少なくとも約18℃上がる。表面が冷たくても中は温まっているので、ED 5%(通電時間の19倍休ませる)を守る
- DCソレノイドの突入電流は大きくない。注意すべきは流れ続ける電流、発熱(焼損)、オフにした瞬間の逆起電力(還流ダイオードで逃がす)
次の記事では、このソレノイドをRaspberry Pi Pico 2 WとMOSFETで動かします。
よくある質問(FAQ)
QDCソレノイドに極性はありますか?
A一般的なDCソレノイド(プランジャーが鉄だけのもの)には極性はありません。逆につないでも同じ向きに動きます。ただし、永久磁石を内蔵したタイプや、還流ダイオードを付けた回路では極性に注意が必要です。
QDCソレノイドの電流はどうやって調べればいいですか?
Aコイルの抵抗をテスターで測り、「電圧 ÷ 抵抗」で計算できます。今回は12V ÷ 6.95Ω ≒ 1.73Aでした。
QED%(使用率)とは何ですか?
A通電してよい時間の割合です。ED 5%なら、通電した時間の19倍は休ませる必要があります。守らないとコイルが過熱します。
QDCソレノイドを触っても熱くないのに、ED%を守る必要はありますか?
Aあります。今回は5秒の通電で、表面温度は変わらないのに、コイルの抵抗から計算すると中は少なくとも約18℃上がっていました。
QDCソレノイドに突入電流はありますか?
AACソレノイドのような大きな突入電流はありません。電流はコイルの性質でゆっくり立ち上がり、「電圧 ÷ コイル抵抗」(今回は約1.73A)で頭打ちになります。
Q逆起電流(逆起電力)とは何ですか?
Aコイルの電流を切った瞬間に出る、電源電圧よりはるかに高い電圧です。スイッチ部品を壊す原因になるので、還流ダイオードをソレノイドと並列に入れて逃がします。
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